• 団体信用生命保険って何?団体信用生命保険の概要やポイント

    住宅ローンの契約条件の一つに、「団体信用生命保険(団信)への加入」を設けている商品が多く見られます。
    保険に加入できなければ住宅ローンを契約できないという商品も数が多く、普段の健康管理もローン審査の重要なポイントになっているのです。

    ところで、団体信用生命保険とは、どのような保険なのか詳しく理解した上で加入している方は、意外と少ないのかもしれません。
    団体信用生命保険の特徴や選ぶときのポイント、一般的な生命保険との違いなど、団信の基本的な情報をまとめてご紹介します。

    【団体信用生命保険はどんな保険?】

    団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が亡くなったり高度な障害を負ったりしてローンの返済ができなくなったときに、契約者に代わって保険会社がローンを完済してくれるという商品のことです。

    住宅ローンは一般的に、家族の中で一番収入を得ている人が契約者になります。
    その人の身に万一のことがあると、遺された家族には多額のローンが残され、生活が困窮することが予測されるでしょう。

    団体信用生命保険に加入していれば、保険会社がローン残債をすべて返済してくれますから、遺された家族の経済的な負担を軽くできますし、家に住み続けられるという安心感も与えられるのです。

    なお、銀行などの民間の金融機関では、団体信用生命保険への加入を義務にしているところがほとんどです。
    保険に加入できなければ住宅ローンの審査に通らないといわれるのは、このためです。

    【保険料はどのように支払うのか】

    団体信用生命保険の保険料は、通常、住宅ローンを借り入れている金融機関が納めます。
    保険料は毎月の返済の利息分に含まれていますから、契約者が別途保険料を納める必要はありません。

    なお、契約内容によって保険料(=金利)が異なるため、特約を付けた場合には金利にアップすることがあります。

    【団体信用生命保険の特約と保障内容の違い】

    一般的な生命保険のように、団体信用生命保険にも「特約」が付けられる商品が多くあります。

    特約を付けることで、加入している生命保険の契約内容を見直すことも可能ですから、どのような保証内容があるかを事前に把握しておくことも大切です。

    ここで、主な団体信用生命保険の特約について案内しましょう。

    がん特約

    がんと診断された方や治療を受ける方に、保障が受けられる特約です。保障内容や条件は保険会社によって異なりますが、「初めてがんと診断された場合に、住宅ローンの返済が一部免除または全額免除になる」という商品も見られます。

    最近では、がんだけでなく、一定期間以上の入院をともなう病気やケガをした際に、毎月の住宅ローン返済額に相当する保障が受けられる「月次返済保障」の付いた、がん特約も増えています。

    保険料にあたる金利の上乗せは、保障内容や金融機関によって異なります。0.2%前後アップする商品が多く見られますが、中には金利上乗せのない商品もあるようです。

    三大疾病・八大疾病の特約

    がんに加え、脳卒中や急性心筋梗塞でも保障が受けられる「三大疾病特約」も、団体信用生命保険の特約の定番です。これに、糖尿病や高血圧性疾患、肝疾患、腎疾患、慢性膵炎を加えた「八大疾病特約」が付けられる商品もあります。

    がん特約と同じく、保障内容は契約条件などによって異なります。病気と診断されたときや入院した場合に給付金が支給される商品もあれば、治療が長引く場合はローン残債を全額保障するという商品もあるようです。

    金利の上乗せは、保障の範囲が広いほど高くなり、八大疾病特約の場合は0.2~0.3%上乗せされる商品が多く見られます。

    ワイド団信

    ワイド団信とは、通常の団体信用生命保険に健康上の理由で加入できない方を対象とした、加入条件のゆるい保険商品のことです。たとえば、糖尿病や肝機能障害など、通常の団体信用生命保険に加入できない病気でも、ワイド団信なら加入できる可能性があります。

    ただし、健康状態や治療過程などによっては、ワイド団信でも加入できないことがあります。
    その場合は、保険加入が義務ではない住宅ローンの検討が必要です。

    【加入中の生命保険を見直すときのポイント】

    上述の通り、団体信用生命保険の保険料は金利の一部に含まれています。

    特約に関しても、上乗せされる保険料は金利の一部から支払われますから、「特約を付けると金利がアップする」ことは理解しておく必要があるでしょう。

    その際に検討したいのが、加入している生命保険などの保険料や保障内容と比べること。団体信用生命保険は、具体的な保険料が見えにくい部分があります。仮に、特約を付けることで金利が0.2%上乗せされた場合、金利負担分は100万円を超えるケースもあります。
    しかも掛け捨て型の保険ですから、解約返戻金などは受け取れません。

    団体信用生命保険で特約を付けるか、それとも加入中の生命保険を続けた方が良いか、どちらがお得で安心かを検討することも大事です。

    団体信用生命保険でカバーできない保障内容を見極める

    加入中の生命保険を見直す際には、「団体信用生命保険で保障されないものは何か」をチェックすることも重要なポイントです。

    通常の団体信用生命保険は、死亡または高度障害状態になった場合に保障が受けられますが、病気やケガで給付金が支給されることはありません。
    そこで、特約を付けて病気やケガなどに備えるわけですが、交通事故によるケガで入院しても一切保障のない商品もありますから、保障内容をしっかり確認する必要があります。

    加入中の生命保険と団体信用生命保険を比べて、重複する保障内容はどこかをしっかり見極めてから、加入や見直しを進めましょう。

    なお、団体信用生命保険は住宅ローンの借り換えなどをしない限り、途中で保障内容の見直しや解約ができない商品が大半です。
    特約の場合も、途中で変更や解約は原則できません。
    いま必要のない特約であれば契約をせず、必要に応じて加入中の生命保険で補うという手も、保険を賢く活用するポイントです。

    【団信に加入しなくても利用できる住宅ローンもある】

    団体信用生命保険は、ほとんどの住宅ローン商品で、加入が必須となっています。ただし、保険に加入しなくても利用できる住宅ローンも一部あります。
    代表的な商品が、住宅金融支援機構と銀行などが提携して提供する「フラット35」です。

    フラット35にも、「機構団体信用生命保険」という保険を用意しています。
    保障内容は、一般的な団体信用生命保険とほぼ同じで、三大疾病の特約を付けることも可能です。
    なお、加入は任意ですから、健康状態に不安な方でも融資が受けられます。

    団体信用生命保険からみたフラット35のメリット

    フラット35でも、団体信用生命保険に加入した方が安心ですが、保険に加入しないことが安心感につながるケースもあります。
    たとえば、「生命保険の選択肢が広がる」というのもメリットの一つでしょう。

    金融機関が提供する住宅ローンは、提携する保険会社の団体信用生命保険がセットになっているのが通例です。
    このため、任意の保険商品を選べず、しかも途中で変更や解約もできません。

    これに対してフラット35であれば、一般的な生命保険や医療保険など自分に適した保険商品を自由に選ぶことが可能です。
    保険商品によっては、途中で契約内容の変更や解約もできるでしょう。

    通常の団体信用生命保険の保障内容では満足できない方は、フラット35を利用して自分に適した保険に加入するのも一手です。

    【収入保障保険は団体信用生命保険の代わりになる?】

    一般的な生命保険のほかにも、団体信用生命保険の代わりとして使える保険商品がいくつかあります。
    その代表例が、「収入保障保険」です。

    収入保障保険とは、契約者が死亡または高度障害状態になった際に、毎月一定額の保険金を家族が受け取れる保険のことです。
    収入保障保険にも、三大疾病や八大疾病といった特約を付けられますし、うつ病や胃潰瘍などの精神疾患でも保険金が受け取れる商品もあります。

    一見すると団体信用生命保険に似ていますが、大きな違いは「住宅ローンは完済されないこと」です。
    収入保障保険では、遺された家族が受け取るのは「保険金」ですから、住宅ローンは残ります。毎月受け取る保険金から、住宅ローンの返済を続けていくことになるのです。

    団体信用生命保険の代わりとして検討される方は、毎月受け取る保険金で住宅ローンの返済と遺された家族の生活費を賄えるかを、シミュレーションすることがポイントといえます。

    遺された家族に必要なのは「家」か「現金」か

    団体信用生命保険と収入保障保険を比較するときは、「遺された家族に必要なものが何か」を考えることも大切です。

    団体信用生命保険であれば、契約者に万一のことがあっても住宅ローンは完済されますから、家に住み続けることが可能です。
    ただし、生活費は自分たちで稼がなければなりません。

    一方の収入保障保険の場合、住宅ローンは完済されませんが、生活費は賄えるでしょう。
    ただし、ローン返済額が多い場合は保険金だけで賄えず、家を手放す可能性も考えられます。
    遺された家族に必要なのは「家」か「お金」か、家族で話し合った上で決めることが大切です。

    【まとめ】

    団体信用生命保険は、住宅ローンの契約者に万一のことがあったとき、遺された家族の経済的な負担を軽くするための保険です。
    また、保障内容によっては加入中の生命保険を見直し、保険料や保障内容の最適化もできます。
    これによって、現在の家計負担を軽くすることも可能でしょう。

    さまざまな恩恵が受けられる保険ですが、一般的な生命保険よりもカバーできる保障内容が少なかったり、現金で給付される保険金がなかったりする場合もあります。
    マイホーム購入をきっかけに、保険についても「本当に必要な保証は何か」を、改めて検討されてはいかがでしょうか。

  • 年収400万円で3,000万円の住宅ローンを利用する方法

    国税庁の調査によると、日本の給与所得者の平均年収は約443万円だそうです(国税庁「令和3年分民間給与実態調査統計」より)。
    「そろそろマイホームを購入したい」と考えている方の中にも、年収400万円台という人は多いと思います。

    では、年収400万円の人が住宅ローンを利用する場合、いくらまで借り入れることができるのでしょうか。
    仮に、3,000万円を借り入れて家を買うことは可能なのでしょうか。
    返済を見据えた現実的な住宅ローンの借入額を、検証してみましょう。

    【年収400万円で借りられる住宅ローンはいくら?】

    住宅ローンの審査では、申込者の年収から「借入可能額(返済可能額)」を金融機関が試算しています。
    年収に見合わない希望額を申し込んでも、審査には通らないということです。

    では、年収400万円の方の借入可能額は、いくらくらいが目安なのでしょうか。
    ここでは、借入期間35年、全期間固定金利1.65%(2022年12月現在のフラット35の金利)、返済負担率25%、元利均等返済という条件でシミュレーションしてみましょう。

    ・年収400万円の借入可能額:2,657万円
    ・毎月の返済額:8万3,319円

    参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
    https://loan.mamoris.jp/index.html

     

    手取り額から借入可能額を試算

    年収400万円の中に税金や保険料などを含んでいる場合、実際の手取り額は約320万円という方も多いと思います。
    また、給与所得者でボーナスを含んでいる場合、毎月の手取り給与は22~23万円くらいになる人もいらっしゃるでしょう。

    先ほどのシミュレーションでは、2,657万円を借り入れたときの毎月の返済額は、8万3,319円という結果でした。
    毎月の給与から8万円以上の返済を続けていくことに不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

    では、手取り320万円で借入可能額を求めると、いくらになるのでしょうか。
    借入条件は先ほどと同じで、試算した結果が以下の通りです。

    ・手取り320万円の借入可能額:2,125万円
    ・毎月の返済額:6万6,636円

    参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
    https://loan.mamoris.jp/index.html

    借入可能額は500万円以上も少なくなりますが、毎月の返済額は1万6,000円以上も抑えられ、返済が始まってからの家計にゆとりが生じるでしょう。

    もちろん、家計の状況は人それぞれ異なります。
    毎月8万円以上を返済しても家計に余裕がある方であれば、2,600万円以上を借り入れても問題ないかもしれません。

    【住宅ローンを3,000万円借り入れたときの返済額はいくら?】

    続いて、3,000万円の住宅ローンを借り入れたときの返済額を試算します。
    借入条件は先ほど同じく、借入期間35年、全期間固定金利1.65%、元利均等返済とします。

    ・3,000万円を借り入れたときのトータル返済額:3,951万1,524円
    ・毎月の返済額:9万4,075円

    参考:住宅保証機構「住宅ローンシミュレーション」
    https://loan.mamoris.jp/index.html

    3,000万円を借り入れると、利息返済額が約950万円も上乗せされ、トータルで約4,000万円を返済しなければなりません。
    毎月の返済額も9万円を超えますから、手取り給与が22~23万円の方だと家計はひっ迫することが予測されます。

    ボーナス払いを使えば3,000万円を借り入れても大丈夫?

    給与所得者であれば、「ボーナス払い」を活用することで毎月の返済負担を抑えることも可能です。
    ボーナス払いは一般的に、借入額の4割前後で設定される方が多いとされます。
    元金3,000万円であれば、1,200万円をボーナス払いにするという計算です。

    ここで、ボーナス払いで3,000万円を借り入れたときの返済額をシミュレーションしてみましょう。
    借入条件は先ほどと同じで、ボーナスの割合は4割とします。

    ・毎月の返済額:5万6,445円
    ・ボーナスの返済額(年間):22万6,353円

    毎月の返済額は5万6,445円ですから、年収400万円(手取り額320万円)の方でも家計に余裕が生まれるのではないでしょうか。
    ボーナスの返済額も年間約23万円ですから、現実的な返済額といえるかもしれません。

    ボーナス払いは綿密な返済計画を立てることがポイント

    ボーナス払いを利用する際には、いくつかの注意点があります。
    その一つが、利息が増えることです。

    借入額3,000万円を、ボーナス払いを利用しないときのトータル返済額は約3,951万円ですが、ボーナス払いを利用すると約3,955万円と、約4万円増えてしまいます。
    これは、ボーナス払いだと元金の減るスピードが遅くなり、利息返済額が増えるためです。
    とはいえ、トータルで約4万円の増加ですから、それほど大きな問題ではないでしょう。

    それよりも注意したいことが、ボーナスが減ったときの対応です。
    ボーナスの支給額は、勤務先の業績によって大きく変化します。経営状況が悪くなれば減ることもありますし、場合によっては「ボーナスなし」ということも考えられるでしょう。

    長い人生では、転職したことでボーナスが減ることもあるでしょう。
    あるいは、独立して起業した際に収入が減ることも予測されます。それでも、毎年約23万円のボーナス返済が続きます。

    ボーナス払いを検討されている方は、支給額が少なくなったときに備えて貯蓄をするなど、綿密な返済計画を立てることがポイントになります。

    【持ち家にかかる必要経費も返済計画にくわえる】

    マイホームを購入すると、住宅ローンの返済以外にも、さまざまな経費がかかります。
    その中で意外と忘れがちなのが、固定資産税などの税金と火災保険や地震保険の保険料です。

    固定資産税は年間いくらになる?

    固定資産税は、毎年課せられる税金です。税額は、固定資産税評価額に一定の税率(1.4%)をかけて求めます。

    固定資産税評価額は、物件価格のおおよそ7割になることが多いといわれます。
    3,000万円の物件であれば、約2,100万円が固定資産税評価額という計算です。
    この評価額に税率1.4%をかけた、約29万円が毎年納める固定資産税の額になります。
    年収400万円の方だと、1カ月分の給与以上の額が固定資産税に消えるのです。

    なお、実際の固定資産税評価額は自治体の税務課などで調べられますので、事前に確認した上で返済計画にも含めましょう。

    火災保険・地震保険の保険料はいくら?

    火災保険は、万一に備えて加入することが求められます。
    住宅ローンを利用する場合は、保険への加入が利用条件の一つです。

    保険料は、地域や建物の構造、保証金や契約内容など、さまざまな要件によって異なります。また、契約期間も1年、5年、10年など選べ、長く契約した方が割安です。

    一方、地震保険は家のある地域に大きく影響します。
    つまり、大地震のリスクが高い地域ほど保険料は高いのです。
    なお、地震保険の契約期間は最長5年です。

    保険料は、各保険会社のホームページなどでシミュレーションできます。
    目安として、以下の条件でシミュレーションした場合の保険料を求めてみました。

    ・神奈川県にある木造住宅(新築)
    ・保険金額は建物が1,500万円、家財が500万円
    ・地震保険あり
    ・契約期間は5年

    上記の条件だと、保険料(5年)は約21~36万円という結果になりました。
    5年ごとの更新時に、これだけの額が保険料に消えることも返済計画に踏まえておきましょう。

    参考:i保険「火災保険料シミュレーション(戸建て)」
    https://www.kasai-hoken.info/search/home/

    【住宅ローン返済が家計を圧迫させないためにできることは?】

    住宅ローンの返済額は、毎月の支出のなかで大きな割合を占めるものです。
    返済が負担となり滞納を続けると、最悪のケースでは家を売却したり自己破産したりすることもあります。

    年収400万円の方が3,000万円の住宅ローンを借り入れた場合、こうした最悪の状況に陥るリスクもゼロとはいえません。
    リスクを少しでも下げるためにも、以下の対策を検討することが大切です。

    頭金を多目に用意する

    一般的に、頭金は住宅本体価格の2割程度が目安といわれます。
    3,000万円の家なら、頭金を600万円用意し、住宅ローンの借入額を2,400万円にします。
    借入額を抑えることで返済額も減らせますから、家計への負担を軽減できるでしょう。

    年収400万円(手取り320万円)の方なら、800~900万円の頭金を用意できれば安心です。
    これだけの自己資金があれば、ボーナス返済を使わなくても毎月の返済額は7万円以内に抑えられ、ゆとりある暮らしが期待できます。
    自己資金で賄えない場合は、親に支援してもらうのも一手です。

    返済が始まってからも貯蓄を続ける

    住宅ローンの返済が始まってからは、毎月の返済とは別に、返済用の貯蓄をすることもポイントです。

    長い人生には、病気やケガなどで収入が減少したり、予定外の支出が増えたりすることも考えられます。
    そうした大きな家計の変化があっても、返済を滞らせずに続けるには、ある程度の貯蓄が必要になります。

    家計に変化がなければ、貯蓄したお金で繰り上げ返済を実行しましょう。
    返済期間が短くなり、老後の生活にゆとりが生じやすくなります。

    【まとめ】

    住宅ローンを利用するとき、もっとも大切なことは「返済を滞らせないこと」です。
    ローンの滞納が続くと、せっかく手に入れた家が差し押さえられて競売にかけられる可能性もあります。

    滞納をしないためには、ゆとりある返済計画を立てることが重要です。
    予算ありきで借入額を決めるのではなく、現在の収入や家計状況から無理なく続けられる毎月の返済額を把握し、そこから借入額を決めることも検討してみましょう。